放牧地

映画の感想とか読んだ本の感想とか。たまにぼやき。

G-1.0を観てきた感想

 昨日、ゴジラを観てきました。めっちゃ良かった。備忘録的にここに感想を書き散らしていきます。昨日なので細かい展開には記憶の齟齬があるかもしれないけど、ご容赦ください。

 

 ざっくり括るなら、シン・ゴジラと同系統の「社会派ゴジラ」。ゴジラの存在がなにかのメタファーになっていて、ゴジラと相対する人類との戦いが話のメインになるんだけど、単純な重火器ドバドバ大怪獣バトルじゃなくて、戦いを通じて別の物語を描いているような、そんな話。シン・ゴジラが現実VS虚構なら、-1.0はもっと個人にフォーカスした作りになっていて、正しく戦後の日本人VSゴジラの構図になっていました。

 シン・ゴジラで首都圏を焼き払うシーンがあるんですけど、私はあそこのシーンが初見で本当に怖かった。陽が落ちて暗くなった都内で、ゴジラが作中で初めて熱線を吐いて焼野原にするんですけど、やっていることの残酷さと、暗闇の中の熱線と厳かなBGMが怖くもあり、でも美しくもあり、その不釣り合いさに情緒がぐちゃぐちゃになるっていう、もう人類の無力感を最大限味わえる最高のシーンなんですけど、今回の-1.0でも似たようなシーンがあるんです。真昼間の銀座にゴジラが上陸して暴れまわって、放射能もりもり熱線で木っ端微塵にするっていう。ここのゴジラが本当に怖くて、単純に攻撃力が高すぎて「こんなんどうやって倒せって言うんだよ…」ってなるっていう。シン・ゴジラは情緒をぐちゃぐちゃにしてくるタイプの絶望なんですけど、-1.0はシンプルに攻撃力でわからせられる感じの恐怖感。

 シン・ゴジラはまさしく災害だったと思います。そして-1.0は戦争だった。もっと明確な殺意があった。「個」にフォーカスしているから、強くそれを感じました。だから余計に怖さを感じたのかもしれない。

 戦争から復興して、頑張って再生した街や、生き残って新たな人生を始めようとする人たちを容赦なく一瞬で破壊していくゴジラ。もちろん憎い存在ではあるから、みんなゴジラを倒そうとする。けれども、その圧倒的な大きさと、理不尽な強さを目の当たりにした時に、みんな「やっぱ無理だ」「逃げよう」って言うんです。それが良いなと思って。こっちもゴジラの怖さを身に染みてわかっちゃってるから、気持ちが本当によくわかる。この作品、無茶をする人が誰もいなくて、それがリアルで「現代」の価値観で、すごく良いなと思いました。

 作っている人も、見る人も、戦争を経験していない人がほとんどだと思うんです。だからきっと、戦後の描写やそこに生きる人の価値観は、実際とは違うところもあったと思うんです。でもだからこそ、作った意義があるというか、戦争を経験していない世代が戦後の話を作って、一個現代の答えを置いてきた、というのがとても感動できるなと思いました。その価値観があのラストシーンに繋がったんだって思うと、もう最後は本当に感動した。泣いた。山崎監督には私「永遠の0」でメンタルぼっこぼこにされたんですけど、特攻隊の描き方が神がかり的すぎて、またわからされちゃった…。

 もともと戦争モノは苦手で、(シンプルに悲しくなるから)ちょっと忌避してたんですけど、まあ戦後だし、ゴジラだし、どっかで相殺されとるやろ!みたいな感覚で見てたら3倍くらいの攻撃力で頭ぶん殴られたみたいな、そんな感じです。最後に明かされる衝撃の真実ゥは「うそだろ?!」と思わないこともなかったけど、あれがなかったら心穏やかではいられなかったかもしれない。

 面白かったし、大好きな映画ではあるんですけど、そろそろ怪獣プロレス映画も観たくなってきました。社会派ゴジラを見終わったあとのワクチン的な感じで作ってくれないかな。「ひゅー!さすがオレたちのゴジラだ!」みたいな気持ちも思い出したくなってきた。それか「こんなのどうやって倒せばいいんだ…」ってなったあとにインファント島からモスラが飛んできて、オーバーキルしていってほしいですね。大丈夫です、あの子、時空を超える力とかあるんで。きっとなんでも倒せます。

 

以降ネタばれ。










 戦争で特攻出来なかった敷島が「特攻」という言葉を出して来た時にすごく嫌な予感がした。これ、もしかしてとんでもなく後味悪いもん見せられるんじゃないかって。泣けるとは聞いてたけど、泣けるってそういう意味?!いやだ、私はもっと気持ちよく泣くんだシン・ゴジラみたいに!!!って思ってたんですけど、結果として気持ちよく泣けて良かったです、本当に。意味深なシーンや、音声カットされるシーンがあったので「なにか隠されてるんだろうな」「単純な特攻ではないんだろうな」とは思ってたけど、脱出装置を橘が作ってたっていうのはそれまでの経緯もあってめちゃくちゃ感動した。

 みんな死にたかったわけじゃないし、作中にもあったけど「命を粗末にしすぎた」っていうのは現代から見た戦争の反省だし教訓だった。現代の視点から「あの時のあれは間違いだった」って一個の答えを出しつつ、『犠牲者を出さないでゴジラを倒す』っていうワダツミ作戦を遂行できたのは、本当の意味であの戦争を乗り越えたんだっていう、戦後の人類への賞賛のようにも思えました。もう何度も言いますけど、この時代にゴジラのこの展開を描けたことが本当に価値のあることのように思います。

 演出的なことを言うと、ワダツミ作戦でお馴染みのBGMがかかるの、良かったです。シン・ゴジラヤシオリ作戦開始時に宇宙大戦争マーチがかかるんですけど、ワダツミ作戦もヤシオリ作戦も、その前の沈黙がまじでいい味出してる。静から動への移行が鳥肌立つくらいかっこいい。

 今回も最終決戦が地味。だけどそれが「日本(オレたち)」っぽくて良い。全然派手じゃなくてかっこよくもないんだけど、それを真面目に遂行するのがかっこいい。怪獣プロレスの時の、夜の東京で熱線バーバーどんがらがっしゃんやるのもかっこいいんだけど、それとは違う熱さがある。

 反面、ゴジラは派手さが増してて、熱線を吐くときの背中のギミックが化け物感増し増しで良かったです。あれ、原子炉?の制御棒を抜くのがモチーフになってるらしいですね。青い光はチェレンコフ光だと思うので、海の底からあの光が出てきたときの絶望感が半端なかったです。シン・ゴジラの原子炉設定は原発モチーフなんだと思うんですけど、-1.0は原爆がきっとモチーフなんだろうなと思ったし、そう思うと攻撃力特化しているのも納得というか。銀座で放った熱線とかは描写がまさにだったし。

 映画の中でゴジラがなんなのかとか、目的が語られないところも非常に良かったなと思います。ホラーと一緒で正体に言及しちゃうと怖さが半減するところがあるので、得体の知れない不気味な化け物として描き切ってて個人的には良かったです。

 ただ、最後の描写的に完全勝利ではまったくなくて、あれが再生してシン・ゴジラに繋がるのか、はたまたもっと早い時代にまた上陸して来るんでしょうね。

 あと、これを言ったらナンセンスかもしれないけど、典子さん強すぎない?よくあの程度の傷で生き残ってこれましたね?!ってなった。そもそも空中で電車の手すりに捕まったり、そのまま海面ダイブして無傷で戻ってきたりしてたので、この人のフィジカルつよ…ってなってました。母は強し。生きてて良かった。